「風鈴。ほら」
藤井ちゃんが指差したから私もそちらを見上げる。
透明なガラス細工の様なシンプルな風鈴が風に揺れていた。
「さっきから鳴ってたのはこれだったんだね」
一体誰が校庭の脇に生えている木にぶら下げるんだろう。
けれどそこでくつろぐ私たちにとって、
その音は渓流のせせらぎの様に心地よかった。
「晴子、冬になったらどうするの」
突然藤井ちゃんが、足元の砂を手でいじりながら尋ねた。
「うーんそうだなぁ、どうしようかなぁ」
後ろの金網に寄りかかりながら、私はぼんやり空を仰いだ。
青く澄み渡ったその下の、雲の陰影が目に焼きつく。
自然と微笑んでしまうくらい、気持ちのいい眺めだった。
「それから受験ほんとに頑張って、
受かった所でまたバスケに触れられたらいいな」
藤井ちゃんも空を見上げて、目を細めて言った。
「バスケは晴子の人生とくっついて離れらんないのね」
その声が少しだけ笑っていて、ほんとにそうだ、と自分で納得してしまった。
「うん。ずっと昔から好きだったけど、ここに入ってほんとに好きになった。
この2年半で、ほんとにバスケの虜になった」
藤井ちゃんはまた足元の砂をいじって微笑んでいる。
私は相変わらず、変わらない空を見上げている。
私たちは残された時間で、今しかないものを慈しむ。
手で掬い上げる様に。そっと包むように。
そのキラキラしたものをもっと手で磨き上げて、
かけがえのない思い出にしていく。
いつか終わることを知っていながらも、その作業に励むことは
きっとこの世の何よりも、ずっとずっと、美しいのだ。
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