この時期になると、どこを歩いてもいやにきらびやかな光と出会う。
三井は昔からその光がかもし出す、
心が浮き立つ様な雰囲気が嫌いではなかった。
クリスマスが近づいてくると、街も店も道行く人すらも
皆幸せそうに見えてくるから不思議だ、と毎年思う。
もちろんそんなことはありえないのだが、
不思議とわくわくさせる様な、何かに対して期待が膨らむ様な、
そんな子供じみた感情を、三井は素直に受け止めていた。
こんな寒空の下で人を待つことが苦に感じないのは、
この頭上のイルミネーションとクリスマスの雰囲気のおかげだとつくづく思う。
「あー寒っ。おっせぇよてめえ」
黒いジャケットを羽織ってマフラーを巻いただけの格好で、
三井は歩いてきた男をにらみつけた。
苦じゃないといっても表面では相手を責める。
自分はそういう性分なのだから仕方がない。
「すんません。つか三井さんが早すぎないっすか。5分前ですよ?」
宮城はとりあえず謝っておきながら、三井の後ろにある時計を見上げて言った。
大体待ち合わせ場所に先に三井がいる事自体に、宮城はまず驚いたのだ。
「俺は律儀だからな。こんくらい当然だろ」
「またまた〜」
「るせっ」
宮城は、早くくる程楽しみなのかもなと思ったが、
それは口には出さなかった。
どうせ照れ隠しで殴られるか、ばかじゃねーのなどと罵倒されると思ったから。
「で何、赤木んちでやんのか?お前家知ってんの?」
「いやそれが知らないんすよ。だから途中で皆と合流する事になってるんす」
「皆って」
「バスケ部に決まってるっしょ」
「あぁ」
三井はジーンズのポケットに手をつっこみながら頷いた。
イルミネーションの並木道は続く。
あまり人通りのない道も、今日はやけに人とすれ違うなぁと思った。
気のせいかもしれないが、
今日という日を共に過ごす人に、皆会いに行っているのだろうか。
「どんだけ来んだ?」
「さー俺も詳しくは知らねぇけど、大体皆来んじゃないすかねぇ」
「まさか流川も?」
「いーやー流川はどうだろ!
どうせ来ても寝るだけだろうし、こないんじゃないっすか」
「来ても寝るか、桜木と喧嘩するかだからな」
「クリスマスにまで喧嘩してたらさすがに笑えますね」
「確かに!」
桜木と流川を思い出して2人で笑った。
ふと上を見上げた宮城が、嬉しそうな声をあげた。
「うっわーすげえ見て三井さん、星めっちゃ見えますよ!」
三井もつられて空を見る。
「そうかぁ?こんな地上に光あんだから、
いつも見えるもんも見えねんじゃねぇの」
「何でそういう夢のない事を言うんですかあんたは…」
「いやでも確かにそうじゃねえ?
クリスマス近づくにつれてイルミネーション増えんだから、
空の星も見えにくくなるはずだよなぁ」
「まぁ言ってる事はわかるけど…」
二人でぶつぶつ言い合いながら、しばらく空を見つつ歩いた。
そんなに騒ぐほどではないが、
確かにいつもより多くそのきらめきを数えられるかもしれない。
つまりそれだけ空気が澄んでいるという事なのかそれとも、
「…クリスマスだから見える気がすんだよ」
「ほんと素直じゃねーなアンタ!」
待ち合わせ時間を少しだけ過ぎてしまった。
けれど小走りになる事もなくゆったり歩いていると宮城が、
俺ほんとはアヤちゃんと2人過ごしたかったのになぁ、とぼやいた。
それを笑って三井は、来年があるだろ、と面白がるように言った。
それまでにアヤちゃん狙いのやつが現れませんようになんて、
まるで星に頼み込むかの様な宮城の願いを聞いて、三井はまた笑った。
それまでにお前が頑張れよ、と先輩らしく宮城の肩を叩く。
そんなやりとりを、
裸の体にイルミネーションを巻きつけた木々だけが見下ろしていた。
「あ、あれ皆じゃないっすか」
「え?どれ。うわーほんとだよ団体でいるよ。何か俺ら中学生みたいじゃねぇ?」
「高校生だってこうやって集まるでしょ。何照れてんすか三井さん」
「誰が照れるかバカ!ただクリスマスにまで見慣れた面を見るのが悲しいだけだ」
「クリスマスに会うからいいもんがあるんじゃないすか。あ、手ぇふってる」
「あー桜木うるせぇな。ほんと声でけぇアイツ」
嫌そうな顔をしながらも、その団体に近づいてゆく。
まだ距離があるというのに花道にでかい声で、ミッチー勉強しろよなんて言われて、
三井は、近くに行ったら殴ってやろうと拳を握り締めた。
皆笑いながらこちらを見ていて、何だか妙に照れる。
それもクリスマスのせいだからだ、と三井はこじつけて、
輪に入ってから早速花道に殴りかかる素振りを見せた。
自分が予想以上に楽しんでいることに、まだ本人も気付いていない。