「あー流川?」
振り返る。
仙道だった。
「何でおまえがこんな遠くにいんの?ここら辺じゃねーだろお前?」
仙道は予想通り人懐っこく話しかけてきた。
めんどくせーヤツに会った、と流川は心の中で舌打ちする。
「てめーに関係ねー」
どのペットボトルを買おうか見定めながら、平坦な声でそう言った。
流川の声に熱が入る時なんて、試合中以外そうそうないのだけれど。
「相変わらずつれねーなぁ」
仙道は苦笑しながら流川の後ろを通り、
その隣の飲料水コーナーへ移動した。
流川は仙道に会った事で、
こんなコンビニさっさと出てしまおうと心の中で毒づき、
やっぱり今日もポカリを買う事にした。
大体流川がコンビニで買う飲み物といったら、
スポーツ飲料かミネラルウォーターくらいしかありえないのだ。
それを探すが、どうやらここのガラスの向こうにはないらしい。
その隣を覗き込む。あった。
と、ふいに仙道が質問した。
「合宿どうだった」
そこのガラス戸を開けようとした流川が、仙道の方を振り返る。
「なんで知ってやがる」
「そりゃ他校でもそんくらいの事耳入るよ。
インハイ終わってすぐ行ったんだってなぁ」
なんとなく仙道に知られている事実が気に入らなかった流川は、
ふてくされた様子で答えた。
「てめーにゃ関係ねー」
今度は苦笑というよりは、先程よりも笑いを含んだ声で仙道もいう。
「またそれかよ」
この無愛想な態度を全く気にしない人間も珍しい。
流川はポカリを取り出してから、同じ手でガラス戸を閉めた。
「俺より強いヤツはいたか」
何気なく、ペットボトルを見つめながら言う仙道を見る。
後ろに売っているつまみコーナーと一緒に、
ガラスが2人を映しだした。
「ゴロゴロいた」
流川も、またペットボトルの群に目を移す。
事実なのか仙道への挑発なのか、流川はさらりとそう答えた。
「そっか」
仙道は見定めたのかガラス戸をあけて
やけにオレンジが派手なパッケージのペットボトルを取り出した。
バスケしてんならスポーツ飲料かえよ、と半ば強引なことを思いながら流川は、
仙道の動きを静止するかの様に、声を出した。
「でも、」
「あ?」
仙道が少しだけ目を見張る。
コイツが自分のふった話にのるのは珍しい。
というか、話にのることすら珍しいのだ。
流川は決して仙道の目を見ずに、レジの方へ足を向かせながらゆっくりとこう言った。
「てめーみてーなのは、てめーだけだった」
去り際に目が合う。
そのまま流川は、すたすたとレジの方へ歩いていった。
丸い目で、その長身の背中を見送る。
目を見開いたままとり残された仙道は、一人そこに立ち尽くした。
そうして今言われた言葉を、もう一度頭で考え直す。
考え直してから仙道は、
流川ってのは無口で無愛想で無表情で、
何考えてるか本当によくわかんねー奴だなーと思った。
けど、流川は周りが言う程何も考えてない訳じゃないんだろうと思う。
合宿に行って、俺より強いやつはいたけど
俺みたいなやつはいなかった、って言うように。
「てめーみてーなのはてめーだけだった、か」
面白いこというな、あいつ。
小さく笑いながら仙道は、自分は流川とバスケをするのが嫌いじゃないなと思った。
奴が自分を倒すといって闘志を燃やして構える姿は
自分さえも奮い立たせて、試合を熱くさせてくれるからだ。
バスケのしがいがあるやつだ、と思う。
そういう相手に、出会えたことすら幸せなんだと思う。
本当に何の気なしに寄った近所のコンビニでこんな面白い事が起こるなんて、
人生何が起こるかわからないもんだ、と思った。
流川もとっくに出たことだし、と自分もペットボトルを持ってレジに向かう。
財布を取り出しながら、早く湘北と練習試合がしてーなーと思った。
去り際に見た流川の目が、いつまでも忘れられなかった。
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