ぼんやりあたりを見回す。
やけにキラキラ飾られた作り物のツリーと、天井の蛍光灯が眩しい。
一瞬自分がどこにいるのかわからなくなる。
あ、キャプテンの家だ。
テーブルの向かいで、
マネージャー2人と木暮先輩と楽しそうに話しているその人を見て、
確かそうだった、と思い返す。
右隣ではどあほうと宮城先輩と三井先輩が、
いつもよりでかい声で笑っていた。
他にもバスケ部員がちらほらと、割と広いリビングでそれぞれ愉快そうに話している。
なんだ、この状況は。
俺はまだぼんやりと霧に包まれた様な感じの、頭の中の記憶をたぐりよせた。
ふわふわとアルコールの匂いが漂ってくる。誰か飲んでたのか。
テーブルの右斜め前に、すでに飲み干されたチューハイの缶が転がっていた。
あぁそうだ。
「忘年会とかクリスマス会とかそういうのかねてパーッとやるんで、
絶対くるよーに!」
と、無理やり電話でひっぱりだされたんだ。(誰だったかは忘れた)
それで何でこの場所で眠ってるのかはよくわからないが、
多分俺も、目の前にあるその缶の中身を煽ったんだろう。
このまだふわふわしてる脳みそは、もう眠気のせいじゃない。
ふと隣に座り反対側を向いている三井先輩の肘が、俺の膝にぶつかった。
「あ、わりい流川」
頷いたつもりだったけど多分向こうは気付いてない。
窓の外を見ると、空はもう紫色の夕闇に侵食されていた。
今は何時なんだろう。
そういえば彩子、お前まだ平気なのか時間?
あ、忘れてたわ。今何時?
7時過ぎかな
あ彩ちゃんは俺が送ってくんで、心配しなくていいっすよダンナ!
あら頼もしいわね。そういう訳でまだ平気ですよ先輩
リョーちん、彩子さんち以外んとこ連れてくなよぉ!
耳の遠くの遠くでそんな会話が聞こえてきた。途端に部屋の中全体が笑う。
俺はいつ帰ろうと考えながら、目の前にあったフライドチキンを手にとる。
そして、何でここにきたんだろう、と思う。
こういう集まりは高校入学するまでに何度かあったが、
参加したのはこれが初めてだった。
いつも断っていた理由は、どうせ行っても寝るだけだから。
それにそういう集まりが、それ程好きじゃなかった。だから行く理由もなかった。
それなのに、何で俺はここに来ていて、まだ帰らないんだろう。
ひっぱりだされたといっても、好きじゃないのなら断る事もできたはずなのに。
眠る事は家でできるし、別に今帰っても構わないのに。
ふと甘い炭酸水の匂いがする。
それでも俺は、フライドチキンを食べながら、やっぱりそこを動かなかった。
ツリーに巻かれた小さなランプが色とりどりに光り、
ぼんやりしている頭に小さく入ってくる、たくさんの会話。
時々聞こえる聞きなれた笑い声。空気。
その中にいることは、まるで暖かい毛布に包まれているかの様な、
とても心地良いことの様に思えた。
いつもそばにいるから、無くなると不安になるような。
いつもそこにいるから、いつの間にか落ち着いてしまっているような。
帰りたくなくなるような。

そろそろケーキ食べる?
まだ早いだろーケーキは!
寿司でもとるか
いいなそれ、皆で割り勘しようか
じゃ皆お金出してー!

「あ、おい流川、起きろよそろそろ」

 


多分、こんな感覚は初めてだった。

 


 

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