頭上で風鈴の音がする。
ここにも夏がきた。

手に持っていたカップアイスから滴る水滴を肌に感じながら、
ぼんやりと青い空を見上げてみる。
風呂上りの自分の体から石鹸の匂いが漂ってきて、余計に眠くなった。
パーマがかかった前髪が目にかかり、けだるそうに手で払う。
暇だ。
そよそよと気持ちの良い風を頬に感じながら、
リョータは薄らいでいく意識の中で確かにその2文字を感じた。
まぁこんな時間があってもいいのだと思う。
いつもはコートの上でせっせと体を動かして汗水流して走り回ってる自分だけに、
こんなのんびりした休日はとてもとても貴重に感じる。
「あーねみー」
口でカップアイスについていた木のへらを、上下に揺らしながら言う。
眠いなら寝たらいいものを、彼にはそれとなくくだらない用事があった。
『今日せっかくの休みだしよ、宮城んちで語り明かそうぜ!』
と強引な先輩に無理やり決められてしまったのだった。
眠たいのに寝てはいけない地獄を味わいながら、
乗り気じゃない自分に無理に約束をとりつけた先輩と後輩を恨んだ。

目を閉じてみる。五分だけ。五分だけ。

リョータの立っている所は広い広い荒野で、
遠く離れているけれど、周りを茶色い山が囲んでいた。
そこにゴールが立っている。ネットはなかった。
1人たたずむ自分。
そこで場面が変わる。
自分の家の前にいた。しかし家の様子はいつもと全く違った。
黒い服を着て泣きはらしている人々。
何の式かは一瞬でわかったけれども、
その奥に置いてある写真に写ってる人物を見たら、良く意味がわからなくなった。
「何で俺がわらってんの?」
そこで画面が変わり、また先程の荒野に立つ。
あ、皆だ。
いつもの仲間が、コートでいつも闘ってきた仲間が、
ネットのないゴールでバスケをしていた。
そこに自分の姿はない。
声をかけてみても、誰も反応してくれなかった。
その中の誰か1人が言った。
「アイツと最後に1回バスケしたかったなー」












目を開いた。
家の中の時計を見てみると10分が過ぎていた。
木のスプーンは手元に落ちていて、
かすかにアイスが残っているカップが転がっている。
空を見上げると、先程よりも雲の動きが速くなっていた。

「おい宮城ー!食いもん持ってきたぞー!!」

「リョーちーん!!」



「あ、来た」
カップとスプーンをまとめてから、立ち上がる。
ったく今日はのんびりしようと思ってたのに。


「人の都合も考えろよなー、あいつら」 






        
けれど彼らの声を聞いて、
安心した自分がいることに
リョータは気付かないふりをした。

 


 

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