異常気象、だと聞いた。
卒業式はいつも震えながらやっていたんだけどなぁー、と担任が笑っていた。
暑さに、涙に濡れた袖をまくっていたヤツも居た。
桜の花びらを拾った。
高校生は学生生活の中で一番の思い出になるんだってよ。
そんな悪友の言葉を思い出しながら、三井は桜の木を見つけた。
「あっちぃなー…」
3月中旬の気候では無いらしい。4月下旬あたりだと。
例年、卒業式シーズンといえば着込んで着込んで迎えるものだったのだが、今年は違った。
三井は下がってきた腕まくりをもう片方の腕で上げた。
体育館へ行こうと振り返った足は、
そういえばたった今そこでオレが出た式のがまだ残ってるんじゃ
と思いなおして止めた。
だけどしまい忘れたボールくらいどこかに転がっていないだろうか。
やはり振り返った足を進めた。
たどり着いたそこは、三井の予想通り卒業式の名残が残されたままだった。
流石に残っている生徒は居ないが、
床に落ちている黒いフタや転がっているボタンを見てみると、
あぁ卒業式をやったんだという実感がわいてくる。
足を踏み入れて見回してみると、
隅にオレンジ色のボールが転がっている事に気が付いた。
式の時もずっと出てたのかよ、と薄ら笑いしながらそれに近寄り手に取る。
はずませてみようと落とすが、
いかんせん床に敷いてあるシートの所為で跳ね返る高さはそれ程高くも無かった。
ここでバスケする事ももう無いのか。
広い体育館を見渡して、三井は何だか妙に寂しくなった。
不思議だ。
この体育館を見渡すだけで、
普段の練習内容、声出し、IHの時の試合の情景、そして、仲間達。
そのバスケットの思い出一つ一つが、鮮明に頭の中に蘇ってくる。
まるでこの体育館が全ての原点であるかの様に。
そして三井は、言いようの無い空虚感に見舞われた。
本当に、本当に憎たらしい奴らばっかりだったけど。
全然好きじゃねーけど。
寂しくなんかねーけど。
悲しくなんかも…
それらが嘘かどうかを決める前に、三井はボールを床へ置いた。
もう、ここで汗だくになって練習する事も無い。
これで終わったんだ、オレの分は。
湘北高校バスケットボール部は。
高い高い天井を見上げ、三井は目を静かに閉じた。
下を向いていると涙が出そうだった。
何だかんだいってやっぱオレって寂しいんだ。
珍しく認めた自分に少し驚いた。
ふと、入り口から男の声が聞こえた。
「三井さん!こんなトコに居た!」
三井は顔を下げてそちらを振り向いた。
宮城があきれた様にこちらを見ている。
「お別れ会やるっつったでしょ!何のんびり感傷にひたってるんすか!」
「ひたってねぇよバァカ!」
「早く来て下さいよ。みんな待ってるんすよ」
「おう」
もうゆっくり座る事も無いかもしれないな。
そう思いつつ、立ち上がる。
ボールを一度も振り返らず、
三井は入り口に向かって歩き出した。
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