今季一番らしい。

暑い夏の日だった。


光に反射してツヤツヤと赤い髪の毛が日に透ける。
少年は、乾いた地面の上をはきつぶしたビーチサンダルで踏みしめた。
周りにそびえたつ様な木々達が、余計に暑さを煽っている様だ。
その森へと足を踏み入れても、期待していた温度の低下は全くありえなくてため息をついた。
特に何も考えていなかったけれど
走った。
さほど離れていない距離で、陽炎がゆらゆらと立ち昇っていた。
乾いた茶色い土は、地面に足で踏みしめる度に小さく音をたてた。
強すぎる日差しがじりじりと背中に突き刺さる。
汗が頬をつたって顎を滴った。
蝉の絶え間ない鳴き声がもう既に耳に慣れてきた頃、
少年は立ち止まった。
目と鼻の先には、思わず目を細めてしまう程の眩しい向日葵の集まり。
黄色い花びらが日に透けて、それはそれは美しい花壇だった。
どうしてこのこの花はこんなにも眩しい日差しが似合うのだろう。
少年の燃える様な髪の毛の色と同じように。

草が適度に生えている地面の上を掻き分ける。
触れてみると、やはりその土も乾いていた。
いつ誰が水をやりに来ているのだろう
気になったその疑問は、少年の目にとまったモノの所為ですぐ消え去ってしまった。
草を掻き分ける為に伸ばしていた両腕がピタリと止まる。
湿気も混じった生ぬるい空気も一気に静止してしまったかの様で。
蝉の鳴き声達が耳から遠のいていくのが分かった。
音もたてず、先程まであった周りの木々がどんどん視界から消えてゆく。
少年は動じない。いつもの事であるかの様に。
残ったのは、その少年と、向日葵の花壇と、夏の日差しだけだった。


そろりそろりと腕を伸ばす。
垂れ下がった緑色の草がかすかに触れた。

少しだけ揺れた葉のおかげで気づいた様に、それは静かに羽で呼吸した。
心臓の鼓動だけが耳に響く。
ゾクゾクと緊迫感と興奮が体の中で上昇してきた。
自らの気配を消すという事を初めて覚えた震える腕に、強い日差しが突き刺ささる。
カサッと向日葵の葉が揺れる。
それが少年の方を向いた瞬間、
それに向かって少年の腕がシュッとすばやく伸びた。
少年の目に映ったものは、それが隠れている自分の日にやけた腕だけだった。
手の平のものは逃げようとしたらしい、それは無駄な事だった。
つぶさない様に優しく手のひらにしまいこみながら、胸の前へ持ってくる。
手の中身のそれを見つめ、目を輝かせた。

遠くで、蝉の合唱の隙間から自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
陽炎の向こうに人影が見える。


少年は来た道を引き返し始めた。

 


 

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