そもそも自分が悪かったとは言いがたかったのだ。 今まで落ち込みに落ち込んで家路をとぼとぼと歩いてきたが、 ふと清田は立ち止まった。 灰色のコンクリートに虫が飛び交う電灯の光が落ちて、 そこに自分の影が写る。 暗い空に浮かぶ月を見上げると、 かすかに見えるクレーターが光に集まる虫のようで、清田は目を細めた。 あのパスが敗因だと言われたら否定はできない。 しかしそれについて落ち込む事に一体なんのメリットがあるのか、 電灯を見つめた。 開き直ってみる事を良いとはいえないが、 落ち込むより向上心を持つ事の方がきっとずっと何倍も良い。 何だか急に気持ちが軽くなった。 今日自分がしでかしてしまったミスを忘れる訳ではない。 明日も変わらずバスケをする。その糧にするんだ。 そうだ、こんな姿は一番自分に似合わなかった。 途端に神の心配げな顔が頭に浮かんだ。 ついでに牧に、 昨日と今日の自分の変わりように苦笑される顔も浮かんだ。 そして清田は小さく笑った。 なぜこんな気持ちになったのかわからない。 電灯と月を見上げても、まわりに虫が飛び交っているだけで、 決してすばらしい光景ではないのに。 電灯に集まる虫は光を食べようとしているみたいだ。 清田は右側の土手の下に流れる川を見下ろした。 静かに流れるそこにも月が落ちていて、 ゆらゆらと千切れているそれもまた風流である。 水が月を侵食する。 理科で習ったそんな言葉をぽつり思い出して、 家に帰ったら、バスケットボールを握ろうと思った。 今よりももっともっと上達して、 いつか牧さんよりも流川よりも凄い選手になる。 清田は電灯に照らされた道を見つめ、そして歩き出した。 |
そこには本物の月と電灯の光が、川沿いの道を歩く清田を見下ろしているだけだった。
