太陽の光に反射する白いTシャツが眩しい。
空には入道雲がそびえ立つように浮かんでいる。
白いシーツが今にも飛んでしまいそうで、
あたしは慌てて物干しにかけてあるシーツの両側を洗濯バサミではさんだ。
こうしておけばきっと飛ばない。
「あぁ晴子ちゃん、Tシャツ飛んじゃうわよ」
ふと後ろから声が聞こえて、
後ろから振り返ったらこちらに歩み寄ってくる彩子さんが居た。
「あっ、はい!」
慌ててかけよって、
飛んで行ってしまいそうなTシャツに洗濯バサミを付ける。
「全く、大変よねぇこんな数。干すのも手間取ったでしょう?」
彩子さんはしみじみと、風に揺れる洗濯物を見上げながら言った。
「いぃえー、全然平気ですよこのくらい。
それに彩子さんに手伝ってもらったし」
そう?と彩子さんは微笑みながら首をかしげた。
日差しの加減か何だかいつもより魅力的な笑顔で、
宮城先輩なら絶対数秒見とれちゃうだろうなー、と思った。
ふと縁側の廊下からドタドタとうるさく足音が響いてきて、
あたしと彩子さんはそっちを振り向いた。
「アヤちゃん!」
走ってきたのは宮城先輩だった。
「どうしたのよリョータいきなり」
「花道と流川がまた殴り合いしてんだけど!」
「また?朝ごはん食べる時もやってなかったっけ」
「何か今朝よりヒートアップしてるよ」
そこでハーッと彩子さんはため息をついた。
お兄ちゃんが居なくなってからの合宿、
あの2人を力ずくで止められる人は
かろうじて彩子さん一人だけになっていた。
そのお陰で、彩子さんのハリセンを出す回数は
昨年に比べて異様に多くなっていたのだ。
「ほっときなさいよ。あたし今晴子ちゃんの手伝いしてて忙しいの」
突然自分の名前が出てきてドキッとする。
「えっ、あたしはもう終わりましたよ彩子さん…」
「いいのいいの。とにかくリョータ、あんたに任せるわ」
えぇっ!!何それ!と先輩が絶叫した時、また廊下の向こう側から
心臓に響くような足音が先程の倍のうるささで近づいてきた。
彩子さんが呆れたように眉間に縦じわを刻んだ。
「大体朝寝ぼけて先に殴ってきたのはてめーだろ!」
「ンなの知るか。覚えてねー」
「なっリョーちん、先に手ェ出してきたのコイツだよな!」
話題をふられた先輩は、
無言で2人に手の平を出して『オレにふるな』の動作をした。
流川君が桜木君の右頬にパンチを入れながら言う。
「んな事よりてめー、オレの朝飯のめざし何食わぬ顔で食いやがった」
「誰も手ェださねぇから余ったヤツかと思ったんだ」
桜木君も殴り返しながら言って、
すかさず流川君は倒れる前に左足で桜木君の腿を蹴った。
全く終わる気配の無い2人の殴り合いをあたしは呆然と見ていたんだけど、
彩子さんは全く…と言いながら2人に近づき、
ほぼ同時にハリセンで頭をひっぱたいた。
「いでっ!」と2人とも頭をおさえてしゃがみこむ。さすが彩子さんだ。
「2人ともこれ以上こんなくだらない喧嘩続けたら、
基礎練メニュー100回づつやらせるわよ!」
まだまだ練習が控えているというのに、
いやそれよりも折角の合宿に来てるのに、
基礎練メニューをやらされる事には2人共うっと唸った。
そのうめき声と同時に2人共にピタリと動きを止めて、
お互い反対方向へと歩いて行ってふすまに隠れて見えなくなった。
「アヤちゃんスゲー…」
先輩が感動したように彩子さんを見る。私も同意だ。
途端に胸に一抹の不安が流れこむ。
「あたしが3年生になった時、どうなっちゃうんだろう」
不安げに呟いたあたしを振り返って、彩子さんは爽やかに笑った。
「大丈夫よ、それまでにあたしが仕込んであげるから!」
その時桜木君が歩いていった方向から「げっ」と嫌そうな声が聞こえてきた事を、
あたしは後から宮城先輩に聞いた。

 


 

 

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