「何だこれ」 汗だくになりながら部活を追え、 部室に入ってきたリョータは広げてある雑誌を指差した。 そのモノクロページの見出しには大きく 『流行のヘアスタイル』と太字でかかれている。 「おーそれ、オレんだよ」 ふと後ろから三井の声が聞こえた。 その声をきっかけにしてぞろぞろと皆息を荒げながら部室に入ってくる。 「三井さんのっすか。そんなとこだろーと思ってたけど」 「そーオレオシャレだから」 「や、ちゃんとロッカーにしまってないって事は、っていう意味で」 「…ンだとてめえ」 笑っているリョータに青筋をたてている三井の所へ、 花道も汗をタオルでふきながら近づいてきた。 「それさっきミッチーが広げてたヤツだろ」 「お?あそうそう。ここまで見て部活はじまっちまって」 「三井さんのロッカーってやたらこんなモンつまってないっすか。 もしかして毎月買ってるとか」 「ンな金ねーよ。1ヶ月置きぐれーだ」 意外そうなリョータの言葉にムスッとしながら、 三井はロッカーを開け着替えをはじめた。 「いまだいにんきのうるふかっと…うるふってナンだリョーちん」 花道がさも不思議そうに訊いてくるのを見て、宮城は笑って言った。 「お前には流行ヘアスタイルの名前さえしらないんだろうな」 まるで時代遅れの人間の様に言われて、花道は声を荒げた。 「リョーちんオレのこと馬鹿にしてるな?! 服装の一つにも気ぃつけてないんだろーなーとか!」 「すげー思ってる」 「オレも」 三井とリョータの2人から自分の怒りを煽る様な返事が返ってきて、 花道は無性に目の前の雑誌を破りたい衝動に駆られた。 「むっかつくヤロー共だな! おめーらだって大した格好しねーんじゃねーのか!?」 その花道の言葉に三井がすかさず反応する。 「何だとてめえ! オレが毎日TシャツGパンで外出かけると思ってんのか?!あぁっ!?」 勝てる確立はずっと少ないのに三井は花道に殴りかかろうとし、 その手をリョータに押さえられた。 「まあまあ三井さん。でも花道、おめーの服装の事はしらねーけど、 髪型ぐらいどうにかしたらどーだよ。 いっつもおんなじじゃつまんなくねーか?」 と、リョータに赤いリーゼントを指摘される。 「ぬっ!?」 「そうだ桜木。お前髪の毛短い訳じゃないんだからもうちょっと遊べ。髪で」 「そ、そんな事言われてもどーやったらいーんだ…」 「だからそーいう事がこの雑誌に書いてあんだろーが」 三井は雑誌の端を持ちパタパタ振りながら見せ付けた。 「花道も髪型ぐらい格好つければなー今よりモテるかもしんねーぞ」 リョータの言葉に花道の目がサッとそちらへいく。 「はっ、晴子さんもっ?」 「お前の髪のセンスがよけりゃあ、 お友達から恋愛の視点に入れてくれるかもな」 「マジか!!よしじゃあオレ床屋でこの雑誌持ってこ!」 「待ててめーそりゃオレのだろうが。自分で買え!」 「何だよミッチーのケチ!いいじゃねえかどうせこれ300円ぐらいだろ!」 「ばっか600円だ!なんならここで金を出せ!」 「600円くらいミッチーにかかれば100円と一緒だろ!頼むよこせ!」 「意味わかんねぇ事言ってんじゃねぇ!それが人に物を頼む態度か!」 「…オレ先帰るっすよー」 花道が髪型を変えたのは、その数日後の海南戦を終えたすぐ後だった。 |