髪が伸びていた。いや、伸ばしていた。
なぜか自分でもわからない。
邪魔くさくて切ってやろうかと思った時もあった。 
バスケットの話はしたくもなかったし聞きたくもなかった。
話を聞いてしまうと、
途端にあの形状あの色あのさわり心地を一瞬で思い出してしまう。
そんな自分も情けなくて見たくなかった。
左耳にピアスをつけてる1個下のチビが居た。
やけに目について、目立っていて、腹が立って。
いつか仲間集めてやっちまおう
そういう話が出ない訳無かった。
そして目に付けはじめて2,3日が過ぎた頃、仲間に聞いた。


バスケがこの上無く上手いらしい


頬が痙攣するのが分かった。


結局自分も病院にお世話になる事になって
前にもこのベッドに横になったが、あの時よりも自分は進歩しただろうか。
ベッドの感触は変わっていない。
やけに白が目につく病院の中も、変わっちゃいなかった。
周りは何も変わっていない。付き合う友達くらいだろう。
環境はあの時と同じだった。
悲しい程に、変わっていなかった。
……オレは?
気が付けばいつも手元に持っていた物が無くなっている。
慣れすぎていた感触が、もう自分の手元のどこにも無かった。
もう一度掴む事さえ、出来なかった。
やるせなくてイライラした日が続いた。
ほしくてもほしいと言い出せなくて、思う事さえも拒んでいた。

        
自分に足りないものは何だったか、
それには既に気がついていた。
なんだったのか分かっていた。
だけど今更それを求める事も出来なかった。
自然に出来た仲間と笑いあったり殴り合ったり、辛くなかった。
楽しかったといえばそうだ。
ただ単純に楽しかった。
それだけだ。
本当にやりたい事を自分の目の前からくらます為に、
必死に今の現実で楽しもうと頑張っていたんだ。

三井はフッと鼻で笑って、冷たい床に寝転んだ。



「みーつーいーさーん!」
高く高い天井を仰ぎ見てから、
バスケ部員の呼び声に三井は体を起こした。
ゆっくりと、だけどしっかりと、辺りを見回してみる。


冷たい床のひんやりとした温度も、
白いネットがゆれるリングも、
鳴り響くバッシュの音も、


何一つあの時と変っていなかった。

        






「おー今いくー!」

 


 

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