オレ、今まで何してたんだっけ。
花道は空を仰ぎ見た。
髪の毛を赤くしたのはいつの頃からだったろうか。
小学校をあがって、紺色の制服に身を包んだ時は、
既に自分の髪の色が周りの注目を浴びていた気がする。
それに注目するのがまず先輩だ。
花道は入学して2日も経たない内に、喧嘩を売られた。
2年になると、1年の時よりも
先輩や全然知らない他校のヤツに、からまれる回数が増えた。
比例して、喧嘩の回数もどんどん増えていった。
こちらからからんだ時はあっただろうか。そこら辺は良く覚えていない。
でも大体が、「赤い髪の毛して生意気だから」
とい理由でかかってきた様な気がする。
初対面の奴らは、皆そう思って花道にからんだのだろう。
花道は礼儀の欠片も持っていない男だったが、
相手を不快にさせる様な性格では無い。
けれどそれは、向こうが花道に敵意を抱いていない時の場合で。
売られるばかりの喧嘩に、無論、花道は受けて立った。
逃げる程弱くはなかったし、実際そんな輩なんて怖くも何とも無かった。
尻尾まいて逃げる様な、情け無いまねをするよりは、
別に強そうにも見えない相手に向かった方が威勢も良い。
向こうからからんできたから、こっちからもやっただけだ。
つまり向こうが悪いんだ。
だが、周りの人間がそれを知るはずも無い。
花道の事が、喧嘩が強くて怖いヤツ、
と周りに知れ渡る事に、そう時間はかからなかった。
赤い髪の毛の所為もあっただろうな。
空は虚しい水色に染まっていた。
手には、茶色い皮のボール。
その手触りを確かめる様に握る。
触る。
髪を黒くしようなどとはこれっぽっちも思わなかった。
いくら先生に注意されようと、いくら周りの目がつきささろうと、
花道はこの赤く燃える様な髪の毛をそのままにした。
黒い髪なんて今更性に合わない。
気なんて進む訳無い。
赤が、自分に一番似合ってるんだ。
この色じゃなきゃ駄目なんだ。
そう信じて疑わなかった。
なぜか思い上がりとも思わなかった。
この髪の色だけは、貫き通そうと決めていた。
ゴールもネットも何もない空にそれを放つと、
それはくるくると回転しながら青い空に向かっていく。
小さな弧を描き、戻ってくる。
自分の手の平へ。
つまらなくは無かった。苦しくも無かった。
たしか、楽しかった。
何か足りない事に、
自分で気が付く程、その時の生活に不満足じゃなかった。
これからも自分は、高校へ入っても中学の時の様に周りに怖がられ、
色んなヤツにからまれては喧嘩の回数を増やしていく。
想像してみて、別に悪い気はしなかった。
だって自分は負けない。誰よりも強い。
分かち合える仲間も居たから、そいつらと笑いあえるんなら別に良い。
それが、自分でいう「普通」なんだと思っていた。
今は?
喧嘩も、殴り合いも、
ボコボコになって帰ってくる事も無くなったけど、
前とは違う毎日になったけど、
生きがいってヤツを、感じるようになった。
今は?
前よりも楽しさが一つ増えて、
というか、前より違う楽しさになって、
前とは違う生活を送る事になってて、
そんな毎日が面白かったし楽しかったし嬉しかったし。
やっぱり自分には、
バスケットしかなくて、
バスケットがピッタリで、
バスケットに夢中で、
バスケットが好きなんだ、って事で。
好きな物を好きと素直に言える気持ちよさを、
花道は初めて味わった様な気がした。
だってもう、バスケットマンなのだ。
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